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医療事故

Q. 医療過誤の裁判には、どの程度の時間がかかりますか。

ケースバイケースで一概にいえませんが、医療過誤の裁判では、訴えの提起から判決まで1年から3年かかることが多いのではないでしょうか。
裁判は必ず判決で終わるわけではなく、むしろ和解で終わることの方が多いです。したがって、3ヶ月で和解になることもあれば、判決が出ても、不服申し立て(控訴や上告)があって、さらに時間がかかる場合もあります。

Q. 患者に体質的な原因が、悪い結果を増大させた場合、賠償額は減額されますか。

患者の体質が原因で、通常の場合よりも患者が受ける被害が大きくなる場合があります。
このような原因のことを、「身体的素因」といいます。
医療機関に過失があるものの、身体的素因により被害が大きくなった場合は、その分の賠償額が減額されます。
もちろん、医師に過失がなく、患者の体質のみが原因で悪い結果が発生した場合には、賠償の責任はありません。

Q. 健康診断におけるレントゲン写真の読影は、どの程度の注意義務を課せられますか。

健康診断の受診者は、異常があれば警告してくれることを期待しています。たとえばガンを宣告された患者は、「定期的に健康診断を受けたのに」といい、1~2年前のレントゲン写真の確認を求めたりします。

しかし、健康診断のレントゲン写真は、短時間で大量の読影を要求されるので、通常の診断の際の注意義務とは程度の差があります。
レトロスペクティブにみて異常な陰影があったからといっても、必ずしも責任を問われるとは限りません。
仮に、レトロスペクティブにみて異常陰影があった場合は、正直に患者に話をしてください。

もちろん、健康診断におけるレントゲン写真もできるだけていねいに読影をすべきことはいうまでもありません。

Q. 医療過誤の責任に時効はあるのですか。

原則として、診療行為から10年経過したとき(債務不履行責任)
あるいは、患者の症状(損害)が確定したときから3年経過したとき(不法行為責任)
で、時効消滅します。

逆に言えば、それまでの間は、医療機関としてもカルテを保管するなど、適切な医療行為を行ったことを証明する証拠を保存するよう努めてください。

Q. 因果関係がなくても、損害賠償を請求されることがありますか。

医療行為に過失があっても、因果関係が否定される場合、すなわち、適切な医療行為をしていても、同じ悪い結果は避けられなかった場合には、損害賠償責任は否定されます。

しかし、悪い結果は避けられなかったとしても、患者にはあくまで適切な医療をうける「期待権」があり、これが侵害されたとか、適切な行為をしていたら悪い 結果は発生しなかった高度の蓋然性(高い可能性=因果関係)はないが、相当程度の可能性(ある程度の可能性)はあったとして、損害賠償を認める判例があり ます。
この場合に認められる損害賠償は慰謝料程度であり、、因果関係が肯定される場合に比べれば格段少額です。
しかし、当然の事ながら、医療機関としては、常に適切な医療サービスを提供することを心がけるべきです。

Q. 医療行為と悪い結果(損害)との間の「因果関係」とは、何ですか。

患者に発生した悪い結果(損害)が、医療行為とは無関係であったり、仮に適切な医療を行ったとしても避けられない結果である場合には、因果関係がなく、損害賠償責任は否定されます。
因果関係は、医師の過失によってその悪い結果が発生したといえる「高度の蓋然性」、すなわち高い可能性が認められるときに肯定されます。

その行為がその結果を生じさせたことを100%証明することを求めていませんが、逆に、単なる可能性があるだけでは因果関係は認められません。

Q. どのような場合、医師や医療機関に「過失」があるといわれるのですか。

過失というのは、注意義務違反、すなわち必要な注意を怠ったことです。
それでは、医師にはどのような注意義務があるかということですが、それは、診療した当時における臨床医学の実践における医療水準からして適切は判断や処置をしているかを基準とします。
医療内容がその水準に達していれば過失はないということになるのです。

Q. どのような場合に医師や医療機関は、医療過誤の損害賠償責任を負うのですか。

次の3つの要件を全て満たすときに、損害賠償の責任を負います。すなわち、
①患者に損害、すなわち悪い結果が発生していること
②医師に落ち度=過失があること
③その過失が原因となって悪い結果が発生したこと(因果関係)

医師の処置がまずくても、患者に全く悪い結果が発生せず、問題なく元気になれば、賠償責任はありません。
(もちろん、医師の処置がまずいというのは、好ましいことではありません)

悪い結果が発生しても、それが医師の落ち度がなければ、責任はありません。最善の処置をとったのに、結果が悪いことはあるでしょうが、それはやむを得ないことです。

また、医師の処置に問題があってもなくても、結局は患者に悪い結果が発生してしまうであろう場合には、過失と結果との間に因果関係がないということになり、損害賠償の責任は否定されます。

Q. 医療事故について記者会見をする場合、注意すべき事はありますか。

マスコミは、自分たちが報道したいことを言わせようとします。
まずは、誤った報道をされないよう、事故の概要の資料(サマリー)を作成し、配布すると良いでしょう。
もちろん、この資料自体に誤りがあっては意味がありませんから、よく内容を確認してください。
また、会見の場では、この資料をただ読むのは避け、自分の言葉で話すようにしてください。

記者会見に、直接の担当医以外の者がのぞむ場合には、よく事実関係を確認しておいてください。
憶測で回答をすると、予想外の影響を与えることがあります。分からないことは「調査中である」と回答することです。
もちろん、会見に当たっては、弁護士とも相談の上、想定問答集を用意しておくと良いでしょう。

最後に、マスコミからは一方的に決めつけた質問など、失礼な態度や言動をとられることもあり得ます。この場合も、医療機関側が感情的になると、その場面を映像や写真で報道され、悪者とされてしまうおそれがあります。
どんな場合でも冷静な対応を心がけましょう。

Q. 医療事故発生時、マスコミに対してはどのように対応したらよいですか。

マスコミから取材の申し込みがあっても、これに応じる義務はありません。
一方で、医療機関がマスコミの取材に応じることで、患者や家族のプライバシーを侵害するおそれがあります。
まずはこのことを念頭に置いてください。
したがって、マスコミの取材に応じる場合には、患者・家族にどこまで公表をしても良いか確認をとり、了解があっても氏名は公表しないなど、プライバシーに対する配慮をしてください。

一方、取材の申し入れがなくても公表することが好ましい事故もあります。
事故の結果が重篤なもの、過失の割合が大きいものは、隠蔽したと疑われないよう、公表するべきでしょう。

Q. 医療事故が発生してしまったら、まずどうすればいいですか。

医療機関にとっても医療事故は突然の出来事で、浮き足立つかも知れませんが、あわてず冷静に対処してください。
具体的には
①患者に対する治療を全力でする。
②すぐに家族に連絡する。
 連絡が遅れると、それだけ患者側に不信感を募らせます。
③確実に分かっていることを説明する。
 不確実な事項を説明し、後に説明が覆ると、患者側に不信感を募らせます。
④隠し事をしない。
 逆に、分かっていることは隠さず説明することが肝要です。
⑤医療器材を保管する。
を確実に実行してください。

Q. 医薬品を適正に使用したのに副作用が発生した場合には、どうすればよいですか。

医薬品が適正に使用されても、一定の確率で副作用が発生する場合があります。医療機関にミスはないのですから、賠償責任はないのですが、患者を救済する必要があるため、医薬品副作用被害救済制度というものがあります。

この制度を利用するためには、被害を受けた患者や遺族が医薬品医療機器総合機構http://www.pmda.go.jp/)に対して、給付金を請求します。

医療機関としては、薬の副作用のクレームがあった場合には、この制度が利用できることを頭に入れておく必要があります。
ただし、医薬品の使用が適正でなかった場合には医療過誤となり、この制度は利用できません。
また、抗がん剤や免疫抑制剤など、一部の医薬品の副作用についてはこの制度が利用できないので、注意が必要です。

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